工藤大輝、モーニング娘。’17を語る「今回の新曲は、ハロプロでなければ誕生しなかったハイブリッド名曲!」

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【連載:工藤大輝と偶像音楽論。】第8回

【Da-iCE】[ソロアー写・工藤大輝]「NEXT PHASE」-サイズ大

何十年と続く歴史が作り上げた常勝の礎。
若さには新しく且つ懐古主義も納得させる説得力。

ジェラシージェラシー / モーニング娘。’17

今回の楽曲、言われがちなハロプロっぽいとかハロプロらしいとか、そんなザックリとした括りじゃ勿体ないほどの名曲。去年は「泡沫サタデーナイト!」に心奪われていましたが、その理由は僕がどハマりしていた頃のモーニング感を感じられたから。懐古主義ですいません。しかし今回はまた違ったアプローチで、大きく括るとハロプロ感ということになるのかもしれませんが、個人的に脳内にチラつくのは「太陽とシスコムーン」さん。

少し話が逸れますが、振り返っても「太陽とシスコムーン」さん及び「T&Cボンバー」さんの楽曲は本当にオシャレでカッコ良い曲が沢山ありました。あの年代はファンクとR&Bの最盛期でしたので。

今回の「ジェラシージェラシー」はその要素を取り入れつつしっかり最近のトレンド感も入っていて、例えるなら進化版「ガタメキラ」と言っても過言ではないでしょう。ハロプロでなければ誕生しなかったハイブリッド名曲だと思います。

例えば、吐息系コーラスや、つんく♂さんのコーラスが欲しかった…と思ってしまいがちですか、無くとも聴き劣りしないのはメンバーの技術と声質、トラックの音質や楽器構成及びミックスの技術が凄まじいからで、つんく♂さんは勿論のこと、大久保薫さん含め制作陣の凄さを目の当たりにすることになります。

曲始まりの最初のストリングス、ドキドキしますね。ワクワクしますね。そこからホーンとスクラッチでブレイク。このわずか10秒ほどのイントロだけでガッチリと心を掴み、その後に必殺のビートやシンセ、カッティングギターやストリングスの絡み合い。これがズルい。イントロだけでもう相当カッコいい。シンプルな中にハロプロらしいラインが散りばめられています。

振付もしっかりとストリングスやホーンの音ハメを使っていますし、まさかの初っ端全員ルーティンはカウント僅か8,1,2の3拍のみ。個人的なポイントはビートが入る直前からの流れ。ブレイクにハマった動き(8)から手を広げる→上げる→下ろす(1,2)歩きだす(3,4)前に迫って来る雰囲気がメンバーのダンススキルを引き立たせます。センターの石田さん、この一瞬でもう圧倒的に上手いです。

そこからはフロア(座り)2組+センター奥1人とメイン1組の3グループに分かれての構成。この構成も普通ならやらないですし、真ん中グループの4小節目手前ホーンに対してのキメ2発のポージングなんてこれぞハロプロ!と言わんばかりの完成度と角度。そして以降何度も登場するホーンに合わせた手振り。印象的過ぎて頭から離れません。

抑揚の効いたらしさ全開のAメロから、Bメロに入る前の「Jealousy×8」のリフがクセになります。特徴的なハモリのラインだったり、MVではここで初登場のチェス風に配置されたメンバーが向き合い指差しするシーンも相まって無機質な感じがとても面白いです。

そしてサビ。MV全体を通しての世界観が陰陽・裏表・白黒・二面性の雰囲気。歌詞の内容的にピッタリの世界観ですが、このテーマはダンスボーカルの映像的にはかなり定番です。しかし今回この曲では映像だけでなく、振付と構成でもそれが表現されているところが大きなポイントです。

サビの始まりからすぐ3分割(厳密に言うと2人を挟んで2分割の世界観)での踊りだし。サビというのは大概全員でルーティンを踊りだすのが定番なんですが、その予定調和を案の定ぶった切ります。

歴代モーニング娘。さんの表題曲のMVを見てみると分かりますが、他のグループとは比べものにならないレベルの複雑な構成が多く、先述の分割は当然の如く異なる振付の同時進行や移動が多く、殆どの楽曲の難易度が全体を通して見ると異次元レベル。今回も例外なくそのパターンとなっています。

サビ終わりにくるラップパートも「抱いてHOLD ON ME!」がチラつく僕はやはり過去の人なのかもしれませんが、それを置いといても本当に凄く好きで、らしさに加えて良さが満載されています。ただ韻を踏むだけがラップじゃないですし、野中さんの発音の素晴らしさも鳥肌モノ。

2番サビ後のラップパートも是非ライブで観たいと思ってしまうようなフロウ。後ろで中腰でチョコチョコ移動している部分に愛嬌を感じますし「細い」の部分を何度も聴き続けた挙句「for shorty」に聴こえてきて、ダブルミーニングで韻踏んだのかな…とか色々考えてしまっている僕はもう完全にドツボです。

そしてクライマックスに小田さんの綺麗なフェイクから、ラストに入ってくるジェラシーを乗り越えろ的な意味からきているんでしょう水風船をぶつけるシーンでの無邪気な笑顔の感じが可愛いです。急にくるから尚更強く感じます。

ダンスやリップシーンのみならず色んな表情が一気に押し寄せてくる充実感満載なMVですが、それと同時にライブで生で観たいという気持ちが強く生まれるMVでもありました。ライブ行きたい。最近こればっかり言ってますがそれほどライブって大事なんですよ。と、そんなところで今回はこの辺で終了とさせていただきます。次回も楽しみにしていただけると幸いです。したっけ。

文:工藤大輝

 

※ニッポン放送アナウンサー吉田尚記をアイコンとしたカルチャー情報サイト「yoopy」より転載

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