声優・仲村宗悟が落語に本気で挑戦したら本性が見えた!? よっぴー主催の声優×落語イベントをレポート【声優落語天狗連 第九回】

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アニメ最終回放送前に第九回公演を開催。今回も満員御礼!

アニメ『昭和元禄落語心中』をきっかけに、声優が落語に挑戦! アニメファンに“本物の落語”を体感してもらう「声優落語天狗連 supported by 昭和元禄落語心中」。その九回目が、浅草・東洋館にて2017年3月19日(日)に行われた。『昭和元禄落語心中-助六再び篇-』で、有楽亭八雲と朋友・助六があの世で再会を果たした、最終回直前の第11話オンエア後とあって、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記と芸人&学者であるサンキュータツオさんのMCコンビも、登場するやいなや「第11話がいかに凄かったかを話す会へようこそ!」とハイテンションだ。

じつは、前回の第八回公演でサンキュータツオさんは、『昭和元禄落語心中』のアフレコを見学し、感動したと語っていたが、まさにその回というのが第11話のこと。アフレコ現場での有楽亭八雲役の石田彰さん、助六役の山寺宏一さんの落語の妙技を再び語ると、客席から何度も感嘆の声が上がった。そしてMCふたりは第11話を振り返り、各シーンを大絶賛。寄席シーンの演出の凄さ、カメラワークの素晴らしさなどにも言及し、「本物の寄席に行けば、アニメに出てきた落語のどれかは必ずかかるはず」と、『落語心中』がリアル落語とアニメの幸せな架け橋となったことを、改めて喜んだ。

続いてふたりのトークは、本日のゲストである3代目桂春蝶師匠にまつわる、上方落語と江戸落語の違いについての話に。3代目桂春団治(2016年没)を追っかけていたというサンキュータツオさんは、「上方落語は元々が路上ライブ。見台(けんだい)を拍子木で叩きながら語るのは、大阪には寄席がなかったので路上で演じるしかなく、派手な着物を着るもの人目を惹くためだった」という歴史的な話に始まり、演目の傾向の違いなど、様々な視点から東京と大阪の落語文化の違いを解説してくれた。

声優・仲村宗悟、「親子酒」の高座に挑む

上方落語のレクチャーの後は、「声優落語チャレンジ」のコーナーへ。この日、落語に初挑戦する仲村宗悟さんは、昨年9月の中島ヨシキさんの高座を観て、落語をやりたいと言ってくれた声優さんだ。まずはスクリーンで、仲村さんの稽古風景をダイジェストで公開。なかなか噺を覚えられず、「うわーっ!」と頭を抱える仲村さんの姿や、稽古番である立川志ら乃師匠が噺家の気持ちを熱く語る姿が、とても印象的だった。そしていよいよ、仲村さんが高座へ!

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仲村さんが挑戦する演目は「親子酒」。息子の酒浸りを止めさせるため、一緒に禁酒を宣言した酒好きの父親が、息子の居ぬ間に母親に酒をねだり、泥酔したところに息子が帰ってきて……という賑やかな噺だ。緊張気味だった仲村さんだったが、酒を重ねるごとに酔いが回っていく父の姿を演じていくうちに、どんどん興が乗っていく。この噺、帰宅した息子もじつは泥酔していたというオチなのだが、息子に酒を進めた悪い友人の名前を、前回出演した声優・高塚智人さんから拝借するくすぐりも入れながら、大きな身振りとキレのいい口調で、客席を笑いに巻き込んだ。

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噺を終えた仲村さんは、「緊張しましたよー!!」と一言。登場人物の違いを顔の向きで演じ分ける、上下(かみしも)の切り方がとても難しかったと言い、「4~5回稽古をやりましたが、最後でやっと、落語って楽しいと思えました」と告白。「仕事で行った沖縄のホテルでぶつぶつ練習してたら、同室の先輩にうるさいと怒られました(笑)」と、苦労のほどを語った。そこに談志師匠の物真似をしながら登場した志ら乃師匠。「正直、今までやってきたなかで、いちばん心配だった。先に頭で考えるタイプだったから、とにかく大声でやればいいと納得させるまでに時間がかかった」と稽古を振り返り、仲村さんの苦労は、役柄の感情表現の違いを第一に考える役者と、人物表現をセリフのリズムで表現していく落語家との違いにあったと分析。仲村さんも「師匠に感謝しています! これからは大きな声を出そう!」と、お礼を述べていた。

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上方落語の桂春蝶師匠が、声優ファンの前で「たちきり」を披露すると……

そしてイベントは、3代目桂春蝶師匠の高座へ。演目は、上方落語には数少ない人情話「たちきり」だ。『落語心中』でも2期の第9話に、キャラクターたちの複雑な想いをなぞるように登場したこの噺は、商家の若旦那と芸者・小糸、そして小糸の母親である置屋の女将の物語。相思相愛で小糸のもとに通い詰める姿を見かねた番頭が、戒めのために若旦那を100日間、蔵に軟禁。毎日毎日、小糸から届く手紙を無視していたら、80日目で手紙がパタリと途絶えた。蔵から出された若旦那が、「会いに来てくれなければ、もう生きてお目にかかることはないでしょう」と書かれた最後の手紙を読んで、慌てて小糸の置屋に駆けつけると……という悲恋話だ。
春蝶師匠は、柔らかな上方言葉と上品な仕草で、ひたむきな若旦那、肝の据わった厳しい番頭、恋わずらいをこじらせて死んだ小糸の最期をせつせつと語る凛とした女将を、その心情の裏側にも迫りながら丁寧に描き出していく。まくらで、ご家族の愉快なエピソードでドカンと笑いをとっていた春蝶師匠が、いざ「たちきり」の本編に入ると、そのせつない噺の行く末に、場内もシンと静まりかえっていった。

アフタートークでは、春蝶師匠もMCふたりも、「たちきり」は演じる側も聴く側も年齢によって登場人物の誰に感情移入するかが変わってくると、この噺の奥深さを紹介。最後で小糸の想いが形見の三味線を鳴らす場面で、春蝶師匠が上方では定番の“はめもの”(本物の三味線の演奏)を入れないのは、「サイレント映画のように。お客さんが想像で聴こえるものがあるといい」と考えていること、小糸にあげた線香がたちぎれて三味線の音が消えてしまう落ちも様々な解釈ができること、女将は若旦那を許すと言いながらも心の中では恨んでいて、それを表に出せないのは商売人の哀しさであるなど、噺家目線からの解説をしてくれた。

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そして仲村さん、志ら乃師匠も交えてのトーク。仲村さんの落語は「始まって10秒で上手い! と声に出た。口跡がいいし、登場人物が全員酒飲みなのに、なぜか健康そうで元気になれるね。飲んでいる酒が、全部カルーアミルクに見える。(ルックスが)甘いから!(笑)」と春蝶師匠。その春蝶師匠について志ら乃師匠からは、「これが本物の落語なんだよ! まず声がいいよね。俺にはない、色気がある落語家はほんとに嫌い!(笑)」という裏返しの褒め言葉も贈られ、爆笑を誘った。

次回、名優・山口勝平の落語への挑戦を発表!

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最後は、吉田アナから「『落語心中』は3月で最終回ですが、このイベントは継続させていただきます! 記念すべき10回目は5月6日、声優も決まっています……山口勝平さんです!」との重大発表が。もし会場が1日借りられたら、「今日、落選した人もたくさんいるんだから、仲村くんももう1回やったっていいよね?」と、志ら乃師匠からの嬉しい提案も飛び出した。10回目という節目を迎え、これまで以上に心躍る企画が満載になりそうな「声優落語天狗連」。詳細発表を、ぜひぜひお楽しみに!

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TEXT BY 阿部美香

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