オードリーの「帰ってきた天沼パトロール

 
5.越境の侵入

にゅる、にゅる、にゅるるん…
Mr.Tはオイルを手に、底辺に迫った。
ふだん鈍感な底辺だが、
「う、あん?…そ、その姿は!?」
迫ってくる相手に、さすがにただならぬものを感じたようだ。
それもそのはず、Mr.Tは、いつの間にか上半身、裸になっていたのだから。
「恐くないさ。さあ、キミも一緒に…」
と、彼は底辺のTシャツに手をかける。
「う、うわぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁああ〜〜〜〜!」
大声を出し、底辺は走って部屋を出ていってしまった。
「…………くそぅ、もうちょっとだったのに」
ため息をついて、Mr.Tはメモ帳を開いた。
そこには何人かの名前が書かれ、頭に×印がつけられていた。
× サギ師
× 子泣きジジイ
そして今、三人目の名前に×をつけた。
× 底辺
「いよいよ、本命といくか。きっと読者も待ってるだろうからな」
四番目に書かれた名前を見て、彼は隠微にニヤリと笑い、
「じゅるる…」
と、舌なめずりをした。

「なんだこりゃ?」
その男は、一人、部屋で本を読んでいた。本…といっても紙の本ではない。ipadで電子書籍を読んでいたのだ。
それは「アキバの休日」という小説だった。登場人物のアイコンが変更できるのはいいのだが、
ヒロインの変えると、まるで男と男が恋愛してるような物語に読めてしまうのだ。
「なんだこりゃ?」
とその男・相馬たかしは再つぶやいた。電子書籍についての感想だ。
「違うよ!」
と相馬は、この文章そのものにツッコんだ。
「なんで、本文の中にまで作者の宣伝が入ってくんだ、ってことだよ!」
――へ?
「やりすぎだろ。作者の分というものをわきまえろ!」
――あ。ス、スミマセン!
作者は土下座した。

プルルル…
その時、相馬のケータイが鳴った。電話に出ると、
「私だ」
Mr.Tの声がした。


(続く)

「相馬たかしさん、ゴメンナサイ!」
萌えとはなんだ?!悩む王子、駆けるオッサンたち、そして戦うメイドさん!
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箱根コナキンズ物語・BL編