ラジオ局ニッポン放送が、NTTドコモと“自然と会話が続くAI”を開発

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ラジオ局ニッポン放送が、NTTドコモと“自然と会話が続くAI”を開発

12月5日(水)、東京ビッグサイトで開催中の「DOCOMO Open House 2018」にて、NTTドコモとニッポン放送が、より自然な会話が続くAI(人工知能)「意外とわるくないAI」の発表を行った。

従来の対話AIといえば、人間側が「天気を聞こう」「最新ニュースを聞こう」といった明確な目的が必要なうえ、どんな命令をすればAIから返事が返ってくるだろうか、と考える必要があり、会話というにはほど遠い無機質なやりとりが通常だ。
そこで、会話のプロであるラジオ局ニッポン放送が対話AIのシナリオ設計に協力。不思議とコミュニケーションが続くAIが完成したという。

ラジオ局ニッポン放送が、NTTドコモと“自然と会話が続くAI”を開発

マイク付きヘッドホンをセットし、「ハローワールド」と発するとシステムが起動。こちらが『何を聞いてみようか……』と悩んでいた隙に、AIが「こんにちは。ちょっと僕のこと、でんちゃんって呼んでみて」と話しかけてきた。とりあえず言われるがまま「でんちゃん」と返すと、「ごめんちょっと聞き取れなかった。えーっと、あなたのお名前は?」と、聞き取れなかった内容は受け流し、AIは新たな質問をしてきた。その後は「何時に帰る?」「帰りの天気を教えようか?」「今日何を食べるか決めている?」といった質問があり、天気やおすすめの飲食店情報を自然と得られた。また、AIは会話の中に「へー!そうなんだあ!」「ええ!?」「うそー」といった“驚き”が入っており、親近感や話を聞いてもらっているような感覚になった。

ラジオ局ニッポン放送が、NTTドコモと“自然と会話が続くAI”を開発

「意外とわるくないAI」の開発を担当した、NTTドコモのサービスイノベーション部第2サービス開発担当・松尾映里氏に話を伺った。AIの全シナリオをニッポン放送が監修したことについて「私たちは技術屋としてテクノロジーの面を、ニッポン放送さんにはテクニックの部分をお願いしました。やはり、人間と対話しているニッポン放送さんが一番、自然な会話の技術を持っているので」と説明。

今回、AIとの会話は15以上のやり取りがいつの間にかふわふわと続いたが、これは“正確な答えを出す”という技術的な考えを控え、変な答えが返ってきても「そっか」「なるほどね、じゃあ――」という風に話を流す人間的なテクニックの部分を入れたことで、うまく会話が続いたという。松尾氏は「アナウンサーさんは、ふわっとした会話でも成り立つことを認識していて、我々は気付かされることが多かったです。明確な正しい答えを出さなくても良いんだ、と。盲点ばかりでした。技術屋は、もっと音声認識の精度を上げる方向に進んでしまうのですが、ニッポン放送さんは『うまく聞き取れなかったら、こういう会話をすれば丸く収まる』と提案し、確かにそれで自然になりました。本当に目からウロコで驚きましたね」と、気付きの多い開発現場だったと明かした。

ラジオ局ニッポン放送が、NTTドコモと“自然と会話が続くAI”を開発

AIのシナリオを監修した、ニッポン放送の澤田真吾氏にも話を伺った。シナリオ作りには、アナウンサーが入社時に学ぶマニュアル知識や、吉田尚記、那須恵理子、東島衣里、新行市佳の、現役アナウンサーそれぞれのノウハウを詰めたそうだ。澤田氏は「会話で重要なのは『今日はラーメンを食べたい』『ラーメン!? それよりも――』といったようなオウム返しや、うなずき、驚き。これをすることで、格段に会話がしやすくなるんです」と説明。

従来の対話AIとの違いについて、「これまでは人間がAIに命令しないと成り立ちませんでしたが、今回のものは、アナウンサーがインタビューするように、AIが人間に質問してくれます。AIが会話をリードするので、人間は受け身で成り立ちます」と述べた。利用シーンは、ホテル受付や商業施設のコンシェルジュなどで、自然な会話からうまれる情報提供を想定しているそうだ。ラジオ局にいながらもAIに関わるプロジェクトにかかわったことで、仕事の視野が格段に広がり、ラジオの新たな未来を感じたという澤田氏。今後も、会話AIのシナリオコンサルティング業務を積極的に展開していくそうだ。

「意外とわるくないAI」は、12月6日(木)~7日(金)に東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催されるイベント「DOCOMO Open House 2018」(参加無料で事前登録制)に出展。ブースでは実際の動作を体験できる。

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