声優落語天狗連

アニメ『昭和元禄落語心中』のテレビ放映に合わせてスタートした「アニメ×落語×声優」の異色コラボイベント「声優落語天狗連」の魅力をお届けします!

キンプリ、A3!出演の声優・五十嵐雅が落語に挑戦。

2018年01月25日 11:00

 

アニメ『昭和元禄落語心中』をきっかけに生まれたイベント「声優落語天狗連」の第十三回が、2017年11月26日に浅草・東洋館で行われた。

落語はアニメ好きと絶対相性がいい

アニメ『昭和元禄落語心中』をきっかけに生まれた「声優落語天狗連」は、アニメ×落語をコンセプトに、声優が初めて落語に挑戦する「声優落語チャレンジ」と、プロの落語家による“本物の落語”が生体験できるイベントだ。その「第十三回」が2017年11月26日、本イベントおなじみの浅草・東洋館で行われた。

旬の声優による“初めての落語”への挑戦と、いま注目の落語のプロによる匠の技を同時に楽しめることで人気の「声優落語天狗連」は、今回も約200名の観客を集めて大盛況だ。イベントの仕掛け人であるMCのふたり――ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記と、お笑いコンビ「米粒写経」のメンバーで日本語学者・芸能研究家としても活躍するサンキュータツオの落語×アニメトークからスタート。

落語とアニメの趣味を両立する人はじつは少ないが、「ここに集まった僕らは、落語とアニメが好きな希有な存在。みんな仲間だよ!」と言うタツオに拍手が起き、話は10月スタートのアニメ番組の話に。毎年、コミケで自作自演落語のCDを頒布している吉田アナが、「今期は『宝石の国』が最高に面白い! 宝石キャラクターも落語のネタにしやすい。フォスフォフィライトが与太郎になった『道具屋』とか聞きたくない?」と言うと、「『少女終末旅行』も落語の『二人旅』そのもの。落語はアニメ好きと絶対相性がいいはずなんです」とタツオ。

世に残る物語にはドラマの構成に黄金律があるが、日本の落語はプロットを全面否定した“日常系”なのに面白い。今やネタ探しに苦労しているハリウッドの脚本家も、ついに落語に注目し出しているのだとか。「そのうち、4DX『粗忽の使者』ができてもおかしくない!」と熱弁する吉田に、タツオは「その意味でも、今日見ていただく落語家・瀧川鯉八さんは最先端。初めて世界を戦えるコンテンツが落語から出てきた」と語る。

その瀧川鯉八さんは、古典落語をやるのが王道の落語界では大変珍しい、“自作新作落語しかやらない二ツ目”だ。そこでMC陣のトークは、「そもそも新作落語とは?」の解説に。タツオによれば、新作落語に対する古典落語という言葉こそ、江戸~明治の大名人・三遊亭圓朝以降に生まれたもので、周囲からの嫉妬によって寄席で得意な噺ができなくなり、苦肉の策として新作落語を高座にかけたのが発端。今は定番となった噺を多作した圓朝までを古典落語、それ以降を新作落語と呼ぶそうだ。

さらにタツオは、現代の新作落語は「三遊亭圓丈師匠のように、暗黒舞踏のような急進派が多いが、鯉八さんはまた別」と言い、「新作は“落語”そのもののイメージと戦い、常に笑わせ続けなければならない」難しさがあるので古典と両立する落語家も多いが、新作をかけ続ける鯉八さんは「落語界のベンチャー企業家」で、ITでいえば“落語2.0”の存在だと紹介。吉田アナは新作落語の魅力を「iPhoneを初めて手にしたときの衝撃に近い」と例える。

そして「今日、初めて落語を観るお客さんも多いのに、落語初披露の五十嵐雅くんが古典落語を背負うとは!(笑)」と、次コーナーの「声優落語チャレンジ」に登場する五十嵐雅を紹介。五十嵐の出世作『キンプリ』こと劇場版アニメ『KING OF PRISM by PrettyRhythm』にかけて、MCふたりは「『キンプリ』は145回観に行けますが、五十嵐くんの落語初体験を観られるのはこの1回だけ!」と言いながら、約3分ほどの五十嵐の稽古映像を鑑賞。タツオが「ここは応援上映でいいです!」と告げると客席も大ノリで、噺に詰まった五十嵐に「がんばれー!」と声を掛け、稽古番の立川志ら乃師匠の指導にも次々にツッコミが入るなど、本イベント初の“稽古ムービー応援上映”は大盛り上がりだった。

声優・五十嵐雅が初めて落語に挑戦

そんな熱気を引き受けながら、五十嵐雅の「声優落語チャレンジ」がスタートする。演目は「鰻屋」。酒をおごると友人に騙されて隅田川の水を飲まされたことがある男に、俺はちゃんと呑ませてやるよと約束した男が、連れだって鰻屋に入るが、主人は鰻裂きの職人が留守ゆえ、鰻を出せないという。ふたりは「じゃあ、お前がさばけ」と主人に命じるが、この主人、ぬるぬるしたものが大の苦手。なんとかうなぎを捕まようと、てんやわんやの大騒ぎをする賑やかな噺だ。

小走りで登場した五十嵐は、鰻屋が大奮闘する様を、着物を乱しながらもパワフルに熱演。ぬるぬるが大嫌いな主人を、大きなアクションでエキセントリックに演じきり、東洋館を大爆笑に包んだ。

口演が終わると、五十嵐と稽古番の立川志ら乃師匠を交えての感想タイム。「お客さんを前にすると、グッと、グッとくるものがありました!」と、挙動不審な動きを交えて、テンション高く話す五十嵐に、「こういう人、落語によく出てきますよね(笑)」と吉田アナ。

今回の五十嵐の稽古は、通常なら1ヵ月行うところを、約2週間で仕上げたそうで、「毎日発見の連続で楽しかった。(立川志ら乃)師匠がすごくて、なんでも見抜く。“落語はすぐ裸にされちゃうからね”と言われたんですが、『キンプリ』と一緒ですよ!(笑)」と五十嵐。「師匠の噺を台本に書き起こして稽古に行ったら、見ちゃダメと言われて、頭の中が真っ白に。何も言葉が出てこなかったけど、なんとかやりきりました」と、当時の慌てふためいた自分を再現してみせたが、後から登場した志ら乃師匠が「いや、全然最後までできずに私に土下座して謝ってた」と暴露。その次の稽古から五十嵐は、毎回“うなぎパイ”を師匠に付け届けていたそうだ。(五十嵐は静岡出身!)

また、たくさんの声優の稽古を付けてきた志ら乃師匠は、第一声を聞くだけで、その人の長所、短所、いま何に悩んでいるかまでもが分かってしまうそうで、「彼は発信能力はハンパないが、人の話を聞いてキャッチボールをするのが苦手。テンションが上がると早口になるクセも抑えるように指導した。今日もそこを修正しながら、落ち着いてやっていたのがすごい」と評すると、五十嵐は「(『キンプリ』の鷹梁)ミナトの芝居でも、同じことを言われていて、ずっと悩んでいたことを指導してもらえて救われた。落語に飛び込んで正解でした。伝える感覚を実感できました」と、初挑戦の成果を喜んでいた。

落語家・瀧川鯉八が新作落語「俺ほめ」「暴れ牛奇譚」を披露

続いては、「今まで観たことのない、ものすごく統制の取れた不思議なものが始まります。いま最も注目されている二ツ目で、50年後、100年後の落語を変えるかも知れない才能です」とタツオが紹介する瀧川鯉八の口演に。

この日の演目は、「俺ほめ」と「暴れ牛奇譚」の2編。“まーちゃん”が「金平糖あげるから、俺をほめて」と要求し、仲間たちが無理矢理、まーちゃんをヨイショしまくる「俺ほめ」。長老と副長老が密かに確執を起こしている村を襲う暴れ牛を鎮めるため、なぜか美人のレイちゃんではなく不細工なタミコが生け贄に選ばれてしまい、生け贄を逃れようとタミコが必死になる「暴れ牛奇譚」。

どちらの噺も、まったく状況説明がされず、観客は何が何やら分からぬまま、ただただ鯉八が放つ、登場人物たちのシュールな会話劇に爆笑させられるばかり。詩の朗読でもしているかのような独特の語り口が、今まで聞いた落語のどれとも違う、「これは本当に落語なのか?」と言いたくなる摩訶不思議な鯉八ワールドを作りだしていた。

口演後のトークでは、場内爆笑の様子を見ていたタツオが「鯉八さんをこれだけ受け入れてくれたところはない。鯉八さんが、出会うべきお客さんはみなさんでした」と言うと、鯉八さんも「12年間やってきて、今日がいちばんウケました。いつも8割5分、スベるので、今日は『君の名は。』の感じ! 嬉しいです」とにっこり。鯉八を前座時代から知っている志ら乃師匠も、落語に厳しかった立川談志は「きっと(鯉八を)認めたと思う。これは間違いなく落語。それを自分で発見したことがすごい」と激賞した。

そしてトークは、ハイテンションで意味不明な話を始めるために声優の現場では“暴走機関車”と呼ばれ、志ら乃師匠も「何を言っているかよく分からない」と称した五十嵐と、鯉八が似ているのではないかという話に。そんな五十嵐に鯉八は、「さっきのトークも超面白かった。声優辞めて落語家になればいい! 『俺ほめ』合いますよ、超スベりますよ!」と言い、「落語も情熱的だった。マッドで感動しました」と謎のほめ言葉を捧げていた。

吉田アナも「今日はめちゃくちゃ面白かった! この企画をやってて良かった!」と喜びの声を挙げ、五十嵐、鯉八のアグレッシブな落語と終始笑いの絶えないトークで、過去最高とも思える盛り上がりを見せた『声優落語天狗連』。次回、14回目は2018年1月27日(土)に開催される。

TEXT BY 阿部美香

【次回公演情報】

『声優落語天狗連 第十四回』
日時:2018年1月27日(土)開場18時30分/開演19時00分(21時00分終演予定)
会場:浅草・東洋館(東京都台東区浅草1-43-12)
MC:サンキュータツオ、吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)
出演:古今亭志ん五、石井マーク、立川志ら乃(稽古番)ほか

「声優落語天狗連」公式Twitter(@seiyu_to_rakugo)