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2月13日 小原信治の草の根広告社
『雪の降る町で』

 降り積もる雪に吸収され、音が消えていた。見慣れた海辺の風景が雪化粧をしただけで、雪国のようだった。果たして東京まで辿りつけるんだろうかと心配になりながら、僕は急遽、収録が行われることになった有楽町のスタジオへと向かった。

 そう、関東に40年ぶりだかの大雪が降った先週の土曜日のことだ。なんとかニッポン放送には辿りつき、収録が始まったけれど、窓の外の雪は見るたびに強くなってゆく。今度は帰れるかどうかが心配になった。三浦半島の突端にある自宅は東京から電車とバスを乗り継いで90分。車なら山をひとつ越さねばならないのだ。

 収録を終えた僕はすぐに有楽町から電車に乗った。案の定JRは次々に止まり出していた。最寄り駅の逗子に向かう電車で動いているのは京浜急行だけだったが、それすらポイントの凍結で何度も長い停車を強いられた。土曜の夕方だというのに車内は通勤時間帯のような混雑だった。雪は前夜から降っていたし、気象庁も「できるだけ外出は控えて下さい」と通達していたから家にこもっていた人も多かったはずだ。にもかかわらずの混雑ぶり。僕のように仕事だったり、冠婚葬祭だったりで仕方なく出掛けた人以外にはどんな「それでも行かなくちゃならない理由」があったんだろうかというのを混んだ車内で人々の顔触れを見ながらあれこれ勝手な想像して暇を潰した。たとえば、海外に転勤してしまう恋人や家族を見送りに行かなければならなかった人、とか、会社の近くで借りたDVD を今日返却しないと延滞金が1万円の大台に乗ってしまう人、
あるいは、オレオレ詐欺に引っ掛かって雪の中、困っていると思い込んだ子供に大金を渡しに行った人がいたら余計に可哀想だな、といった具合に。最初は本を読むなどしていたのだが、次第に目的地に着く前に降ろされてしまうんじゃないかという不安もあって、おちおち読書どころじゃなくなってしまったのだ。

 それでも、なんとか家に辿り着くことができた。

 翌朝、カーテンの隙間から射し込むあたたかな陽差しを感じて窓を開けると、広がっていたのは見渡す限り昨日以上に真っ白な海辺の町だった。音が消え失せていたのは雪のせいだけではなく、134号線を走るバスも運休し、車もほとんど走っていないからだった。昨日はなんとか動いて僕を帰宅させてくれた最寄り駅の電車も朝から運休。おまけに周辺の高速はすべて通行止めになっていて、僕が暮らす海辺の町は完全に陸の孤島と化していたのだ。
 
 出掛ける用事がなかったのことを感謝しつつ、もうひと眠りしようとした時、雪の中を嬉しそうに駆け回る子供たちの声が届いた。日曜だし、子供たちにとっては素敵なプレゼントだったのかもな、と外を見ると、子供たちの周りでは近所の大人たちが雪掻きに汗を流していた。大人たちがシャベルで掻いた雪を子供たちが丸めて交通の邪魔にならない場所で雪だるまを作っていた。なるほど、と思った。子供たちは嬉々として雪玉を運んでいるが、実は雪掻きを手伝わされているのだ。子供たちだって親に「雪掻を手伝いなさい」と言われたら嫌だと駄々を捏ねたかもしれない。でも「雪だるま作ろう」と言われたらから喜んでやっているのだと。

 咄嗟に最近、読んだ本で紹介されていた広島のとある里山の話を思い出した。放置された里山を9万円で買い取り、伸び放題だった木を燃料にした「エコストーブ」をエネルギーに変えて暮らしている人々の話だ。二酸化炭素を排出するが、老木を燃料用に切り倒すおかげで育つ若い木がそれ以上の酸素にしてくれる持続可能なサイクルのエネルギーなのだという。周囲の人々にも広まりつつあるが、その誘い文句は押しつけがましい主義主張や他のエネルギーを否定するものではなく、単に「エコストーブで炊いた米はうまい」という一点のみなんだそうだ。

 雑木林が放置された里山も、大雪も人間の暮らしにとっては邪魔になるものだ。いつかは誰かが片付けなければならない。でもそれを楽しんで利用することで片付けられれば、そこには笑顔さえ生まれるのだ。北海道の雪祭りもきっとこうした逆転の発想で生まれたんだろうと思った。これもまた自然と共存してゆくひとつの方法だと思った。もちろん、自然の猛威が人命にまで及ぶ一刻を争う時は別の話だけれど。

 午後、ようやく動き出したバスに乗って、最寄り駅の逗子まで映画を観に行った。帰りに逗子海岸に立ち寄ると、たくさんの雪だるまが美しい夕焼けを見ていた。海岸にいる人たちもみんな楽しそうに笑っていた。楽しみながら片付けられた大雪が生んだ、日曜日の笑顔だった。

小原信治
投稿時間:2014-02-13 23:13:53
 
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