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1月30日 小原信治の草の根広告社
『ふがいない僕は、ラーメンを食べた。』
 
 17歳の冬のことだ。
 年明けすぐにアルバイトを始めたラーメン店で同じ年の彼女と出逢った時、僕はまだ童貞だった。SNSはおろか、ケータイもポケベルも存在していなかった当時の高校生にとって、アルバイトはこづかいを稼ぐだけでなく、他校の異性との出逢いを求める場所のひとつにもなっていた。その前のバイト先のファミレスでも、いつも誰かと誰かがつきあっていたし、誰かと誰かが別れたらしいよ、みたいな浮いた話がしょっちゅう飛び交っていた。

 今から27年前の冬、僕が厨房でアルバイトを始めた街道沿いのラーメン屋は80年代に湘南地区で店舗を広げていたチェーン店で、店名にもなっているメインメニュー「城門ラーメン」は、海から上がったサーファーたちの冷えた身体を温める為に作られたのが始まりという、今となっては湘南で伝説の味となっているラーメンだった。つまりはラーメン屋はラーメン屋でも女子高生たちが恋を求めてウエイトレスのアルバイトに来ていても決しておかしくはない、ちょっとオシャレ(?)めな店だった、と多少は盛ったであろう僕の記憶がそう言っている。

 そんな店に、彼女は同じ高校に通う親友と二人でアルバイトに来ていた。仕事に慣れてきた頃、僕に仕事を教えてくれていたひとつ上の茶髪でパーマの先輩が彼女の親友とつきあい始めた。そのことを僕に知られた茶髪パーマの先輩が照れ隠しに言った「お、お前らもつきあえば」みたいな全く以て無責任なひと言で、僕と彼女は急接近した。僕に似てお勉強はできなさそうだったけれど、屈託のない笑顔と八重歯が印象的な女の子だった。

 午後10時のアルバイトの帰りにそれぞれのスクーターで一緒に帰るようになった。彼女の家の手前にある公園でエンジンを掛けたまま話すようになった。やがて訪れたバレンタインに手作りのチョコレートを貰った。寒い夜だった。僕らはお互いのスクーターに跨がったまま、キスをした。僕にとっては生まれて初めての大人のキスだった。2月の夜の冷たい空気の中で身も心も火照らせながら、その一方で「俺は一体何をしてるんだろう?」と、もうひとりの自分がその光景を冷静に見つめていた。
「お前はその子のことが本当に好きなのか?」
 もうひとりの僕が僕自身に何度もそう問い掛けていた。

 何てことはない。2ヶ月前の12月に、僕は人生初の大きな失恋をしていた。初恋だった。引きずっていた。大人になってから漫画にするほど引きずりまくっていた。引きずりまくったまま、流されるように、僕はその子とつきあい始めていたのだった。

 帰り道、ひとりでバイト先に寄って、ラーメンを食べた。とろみの効いた熱々スープが冷えた身体を温めてくれた。挽き肉としょうがのたっぷり入った独特の味が、口の中にまだ残っていた初めてのキスを喉の奥へと押しやっていった。

 今思えば、僕はこの頃から屈折していったような気がする。人生で初めて後悔という荷物を抱え始めた気がする。どうしてあの時、ちゃんと言えなかったんだろう。どうしてあの時、あんなことを言ってしまったんだろう。どうして僕は…。童貞を喪失しても童貞のマインドは捨て切れなかった男の痛い青春時代にありがちな、ふがいない僕は空を見上げたの巻、である。

 大人になって初恋の人と結ばれて結婚したという男性とごくたまに出逢い、話をすると、彼らにはそういう屈折がないのにとても驚かされる。彼らはきっと童貞を喪失した時に、童貞マインドまでをも健全に喪失したんだろう。

 童貞を喪失した男には2通りいる。初恋の女性で童貞を喪失した男と、それ以外の女性で童貞を喪失した男だ。そしてそれはその後の生き方を大きく左右する人生の分かれ道でもあると思う。童貞の心をも喪失して生きてゆくか、暗い童貞マインドを引き摺ったまま、生きてゆくかだ。

 今年ももうすぐ、大童貞祭だ。ラジオの前の童貞たちは、どっちの道をゆくんだろう。

 追記 何年か前に、湘南で復活した城門ラーメンを食べた。17歳の冬の夜の、童貞の味だった。

小原信治
投稿時間:2014-01-30 19:15:50
 
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