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1月23日 小原信治の草の根広告社
『なんで昨日電話くれなかったんですか?』

 午前5時30分頃、セットしたアラームが鳴る少し前に目を覚まし、テレビをつけた。5時45分前後に映像がスタジオから東遊園地の生中継に切り替わる。日が昇る前の真っ暗なその場所では6436人分の蝋燭の炎が竹灯籠の中で揺れていた。
 
 1月17日、午前5時46分。僕はテレビで19年目の朝を迎えた神戸を見ながら、ベッドの中で手を合わせて黙祷した。前夜から風邪で寝込んでいたせいで、起き上がることはできなかった。年を重ねるたびに関東では短くなっているテレビ中継が終わってからしばらくすると、僕も眠り込んでしまった。起き上がってシャワーを浴びることができたのは夜遅くになってからだった。

 翌18日、生放送の為、ニッポン放送に入る前に、1年振りの電話番号をダイヤルした。震災から10年目の神戸の街を訪れた時に、たまたま乗ったタクシーの運転手さんだ。以前このBlogにも書いた、長田に残る震災の朝のままのご自宅を見せて下さった方だ。毎年この時期に電話でお話しさせて頂くようになって、気がつけば、もう9年が経っていた。

「なんで昨日電話くれなかったんですか?」

 予想もしていなかった1年振りの第一声に、僕は固まってしまった。
「死んじゃった思いましたわ」
 運転手さん(今はもうタクシーのお仕事はされていないのだが)はそう言うと、堰を切ったように簡単な近況とともに、景気や政治に対する不満不審をつらつらと話し続けた。数年前には1度神戸を離れていたが、今はまた神戸に戻っているのだという。僕は何事もなかったかのように相槌を打ちながらも、意識の半分以上では最初の言葉について考え続けていた。そして、昨日は風邪をひいて一日中寝込んでいたことを最後まで告げることはできなかった。何を言ったところで1月17日当日に電話をしなかった言い訳にしか聞こえないような気がしたのだ。

「なんで昨日電話くれなかったんですか?」
 電話を切った後もずっと、その第一声について考えていた。毎年17日きっかりに電話していたわけじゃない。これまでだって16日の日もあれば18日の日もあったはずだ。でも、今年に限って「なんで昨日電話くれなかったんですか?」
と運転手さんは言った。何か特別な出来事があったのかどうかは分からない。でも、その言葉の裏に僕は運転手さんの、神戸の大震災は忘れられてしまうのではないか。19年前のあの日以来、立ち止まったままの人間は置いてけぼりにされてしまうのではないか。そんな強烈な不安を感じた。

 希望的観測かもしれないけれど、あの震災で大切な誰かや何かを失った人でも、たとえば結婚したり、子供が生まれたりと、新しい何かを手に入れ、少しずつでも未来に向かって歩んでいる人にとって、震災は少しずつでも過去になっていっているのかもしれない。或いはそうしようと歯を食いしばって必死に努力されているのだろう。
 
 けれど、大切な誰かや何かを失っただけで、新しい何かを手に入れることもなく、前に進むことも後ろに戻ることもできずにいる人にとっては、何年経ってもきっと、19年前のあの日のままなのだ。そして時が経つにつれ、周囲との温度差に強烈な焦りと不安、さらには怒りすら憶えるのだろう。

 神戸は未だに景気が戻らないままだという。古くからの商店街が焼けた新長田では高層マンションと併設するショッピングモールなどの真新しい建物に生まれ変わったが、そこに軒を移したかつての商店群は、二重ローンと高い管理費、さらにどの地方でも起きている大きなチェーン店の出店が重なり、大変苦しい思いをされているという。20年目には震災復興住宅の借り上げ終了期限も迫っているという(5年間の延長が認められる場所もあるという)。

 19年が経った。時代は19年分、未来へと進んだ。そこでは東日本大震災と原発事故というさらなる大災害も起きている。殆どの人が立ち止まった。それでも時間だけは決して止まることなく未来へと進んでゆく。多くの人がまた歩き出している。そんな止まることのない時間の中を、自分の足で歩いている僕は立ち止まることはできる。振り返ることもできる。そして、立ち止まったままの誰かがいないかどうか確かめることはできる。声を掛けることもできるし、可能な範囲で手を差し伸べることもできるのだ。
 
「なんで昨日電話くれなかったんですか?」
 止まることのない時間とともに、少しずつでも前に進んでゆく以上は、立ち止まっている誰かに、そういう悲しい言葉を口にさせてはいけないと改めて思った。
  
小原信治
投稿時間:2014-01-23 13:45:30
 
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