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12月12日 小原信治の草の根広告社
『たとえるなら、アボカドみたいに?』
 
 アボカドは実が穫れるまでに10年掛かるのだという。
 種を蒔き、発芽させ、育てた苗を接ぎ木して、育ててゆく。やがて花を咲かせるようになっても、すぐに実をつけてはくれない。正確には、栄養を木自身の成長に回す段階では小さな実をつけても、木が自分の判断で落としてしまうのだという。何年かして立派な大人の木に生長しても1本の木ではアボカドを結実させてはくれない。人間の子供が誕生するには男と女が必要なように、アボカドも結実するには近くに受粉用の別のアボカドの木が必要なのだ。

 という話を、和歌山でアボカドを栽培されている橋爪農園の橋爪道夫さんに伺った。国産アボカドの第一人者だ。ニッポン放送で毎週日曜午前6時頃から放送している「The Voice of Farmers」という番組の取材だった。「そもそもアボガドとアボカドってどっちが正しいんでしたっけ?」くらいの知識しかなかった僕にも分かるよう、橋爪さんはアボカドの実が成るまでの10年近くの歳月についてお話し下さった。

 今回のアボカドも然り、野菜や果物について話を伺ったり、自分でも土を耕し、種を蒔き、野菜の生長に寄り添いながら生きていると、本来生きるということはとてもシンプルなものなんだということに、今更ながら気づかされる。
 
 生命を授かった者の使命は、もっと強く言えば宿命は、次の世代へと生命を繋ぐこと。人間も地球上に誕生した時はそれだけだったんだろう。けれど文明を築いてゆく中で、生き方は次第に複雑になり、結果、生命としての本来のシンプルな目的は見えにくくなり、やがて見失い、HIVのような生命を繋いでゆくこと自体を脅かすようなウイルスにまで悩まされるようになってしまった。今じゃ人間の宿命は子を作ることだ、なんて言っただけで時と場合によっては総攻撃を喰らうこともある。「命を宿す」と書いて「宿命」なんて言葉まで自分たちで作っておきながらおかしなもんだ。

 なんて書いている僕自身も、そのシンプルな宿命を未だ果たせてはいない。けれど、以前は果たそうとは思ってもみなかったひとつの生命としてのシンプルな役目を果たそう、果たしたい。近年そう思うようになったのは、生活の場としての都会から距離を置き、増え過ぎた荷物や虚栄心を捨て、少しずつではあるけどシンプルに生きられるようになって来た証拠かもしれない。

 走ることひとつとっても、シンプルになった。都会で暮らしていた頃は走るといえばジムのランニングマシーンだったものが、海辺の町で暮らすようになってからは太陽の下で風を感じながら、アスファルトの上を走るようになった。ジムに通っていた頃は、隣りのマシンで走っている人を意識してしまい、ついオーバーペースになることもあったけれど、そういうこともなくなった。目に入る競争相手がいないからだろう。波と戯れるサーファーたちを横目に、ひとり黙々と、淡々と自分のペースを守りながら走れるようになった。

 そんな「走る」という行為にも象徴されるように、ここでの暮らしにはラットレースから降りたような心地良さがある。そこまで強く意識したわけではなかったけれど、都会で生活していた頃には強制的に競争を強いられていたような感じがあったのかもしれない。

 今年、初めてフルマラソンを走った時に痛感させられたけれど、別に誰かと競争しているつもりはなくとも、特に疲労がピークを越えている後半、それまで後ろを走っていたランナーに次々と追い抜かれると、余計な体力まで奪われてゆく。ラストスパートはおろか、現状維持を続けることすら難しくなってゆく。

 44歳の自分が人生をフルマラソンに当てはめた時、何キロ地点を走っているのかは分からないけれど、少なくとも体力的には急激な成長はもちろん、現状維持を続けてゆくことすら難しさを痛感させられる年齢にはなった。仕事においても、プライベートにおいても。

 もともと自分以外の誰かと競争するのは向いてない人間だ。都会を離れることで無意識のラットレースから降り、黙々と淡々と自分のペースで現状を維持をしてゆく走り方に切り替える年齢だったのかもしれない。余計な虚栄心など捨てて、シンプルに、自分らしく。現状維持を続けていれば、不意に追い風を感じた時にだって、無理なく少しだけスパートを掛ける余力だって蓄積できるかもしれない。そうすれば今の自分よりも少しだけ、前に進めるかもしれない。

 走る。食べる。眠る。書く。愛する。
 50歳、60歳、70歳まで、仕事も体力も、現状維持。
 シンプルに、マイペースに、そう、たとえるなら、アボカドの木のように。ま、ちょっと強引かもしれないけれど。

 なんてことをつらつらと考えながら、そして、冬の冷たい空気を感じながら海沿いを走っている、12月。

いよいよ明後日から13回目の『福山☆冬の大感謝祭』が幕を開ける。

小原信治
投稿時間:2013-12-12 21:32:10
 
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