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6月14日 小原信治の草の根広告社
ロックの神様
 
 福山さんが長年のラジオ生活でもおそらく初めて「ロック」について熱く語った2007年6月9日“ロックの日”。ぼくはその数時間前に「ロックの神様」のステージを見て、ひとり熱い涙を流していた。

 ぼくにとってのロックの神様。ひと組は中学時代に出会ったセックスピストルズ。福山さんもラジオで話していた、偉大なるロックンロール詐欺師マルコム・マクラーレンが作り出した歴史に残るパンクバンドだ。(※ちなみに彼がセックス・ピストルズにたった一枚のアルバムを作らせただけで如何にして巨万の富を築いたかは彼らの映画「ザ・グレイトロックンロールスウィンドル」参照。ぼくはそんなマルコムに憧れて、純粋な集団自殺バンドが金満主義の音楽産業に翻弄される漫画「GO!GO!HEAVEN!自決少女隊」の原作を書いた。)
 そして、もうひと組がこの日ステージを見させて頂いたTheピーズ。今を遡ること20年前。18歳の時、大いなる衝撃とともに出会ったスリーピースロックンロールバンドだ。こう言っちゃ何だが、既に18年近くメジャーレーベルでリリースを続けていながら、いわゆる「ヒットソング」は一曲もナシ(個人的には全部ヒットソングなんだけれど…)。つまり、デビュー以来、一度もブレイクしていないのに、ヒットを出さなければ長くても三年で干されると言われているメジャーレーベルに18年近く席があるのだ。福山さんも言っていたように「ロックが資本主義にレジスタンスするもの」だとしたら、彼らはそのシステムの中に浸かりながら、ビジネスを続ける唯一の方法は「勝ち続けること」であるという資本主義のルールに従うことなく、もう18年も同じスタイルを続けているのである。その負けっぷりこそがもはや「ロック」そのもので、皮肉なことにそれが明確にバンドのアイデンティティにすらなっていたような時期もあった。当然そこに魅かれた人も大勢いて、その中には「もしも彼らが売れてしまったら今のような曲は書けなくなってしまうだろう、そしたら彼らを好きではいられなくなるかもしれない」と話す人もいるぐらいだ。余談だが、デビュー以来113連敗の競走馬ハルウララが注目された時、ぼくはその在り方が「Theピーズに似ている」と思ったものだ。そういえば、バンドのボーカル&ベースにして、すべてのソングライティングを務めている大木温之さんも、みんなから「ハル」と呼ばれている。

 前置きが長くなったけど、そんな「売れなくても深く必要とされている彼らの音楽」を愛する人たちが、2007 年6月9日ロックの日、全国から小雨降る渋谷AXに集まっていた。そこにぼくもいた。芋を洗うような一階席の熱気がぜんぶ上昇するせいで、立っているだけで汗が噴き出す蒸し風呂ような二階席に。

 「theピーズ20周年記念ライブ」

 何周年というとメジャーデビューしてからの数え年が一般的だけど、彼らは違う。ちょうど20年前、1987年の6月9日、大学生同士で作ったこのバンドで初ライブを行ってからちょうど20年という数え方での20周年記念ライブなのである。つまり、彼らのメジャーデビューはその2年ほど後のことだ。これだけを見ても、もはや彼らにとってはアマチュアもメジャーもそもそも意味がないのかもしれないとすら思えてしまう。おそらく何が「ロック」かなんてことも、どうすれば売れるかなんてことすら考えたこともないだろうし、考えたとしてもその答えを見つけることも、分かったところですることもできないだろう。いや、そんな小難しいことはどうでもよい。「ただひたすらにカッコ良いロックンロールバンド」。それがこの20年、ぼくがTheピーズの音楽を
聴き続けた理由なのだから。そして、そんなスタイルを貫き続けながら自らの「負けっぷり」をも歌い続ける不器用な彼らの音楽は、常にぼくの人生に必要なものだった。
 そして、20周年のこのライブには、観客だけでなく、そんな不器用すぎる「ロックの神様」を愛するミュージシャンたちも次々と駆けつけた。
 奥田民生、トータス松本、YO-KING、TOMOVSKY、峯田和伸(銀杏BOYS)…等々、そうそうたるメンツが、この20年の間に生み出された彼らの歌を生トリビュートしてくれた。

 ぼくも客席ですべての歌を「ひとりトリビュート」していた。この20年が走馬燈のように甦っていた。

 彼らが二枚同時発売のファーストアルバムという鳴り物入りでメジャーデビューした18年前、ぼくはそもそも金が欲しくて、つまり、資本主義でいえば勝ちたくて、勝つ手段として、今の仕事を選んだ。勝てなければ別の仕事に鞍替えするまでだった。書きたいものも、表現したいこともひとつもなかった。勿論、今は無から有を生み出して、見知らぬ誰かの人生に少しでもコミットできるこの仕事が大好きだけど、大好きになってから、仕事を始めた頃は持っていた勝ち方を忘れてしまったような気がする。

 あれから18年。
前述の漫画のように、少しずつではあるが自分の書きたいことを書かせて貰えるようになったぼくは、常に進むべき二つの道の岐路に立たされている気がしてならない。

 勝つために書くのか、負けても好きなことを書くのか。

「負け続ければ勝ち」
 ステージのロックの神様を見ているうちに、そんなフレーズが頭を過ぎった。113連敗するまで出走し続けさせて貰えたハルウララのように、周囲に愛され「次はきっと勝つだろう」と死ぬまで思われ続ければ、負け続けることもできるというわけだ。
 しかし、果たして、そんな風に周囲に愛され、何度負けても「次こそは勝つ」と思われるほどのものが自分に書けるだろうか?そんな人間になれるだろうか?でも、そんな生き方ができたら、表現者としてはこの上なくしあわせなんじゃないだろうか?たとえ、好きなものを存分に買う金なんかなくたって…。
 そんな思いが頭を掠めた、ロックの日の夜だった。

小原信治

投稿時間:2007-06-15 16:07:18
 
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