福山雅治のオールナイトニッポンサタデースペシャル 魂のラジオ 毎週土曜日23時30分から25時までオンエアー。
魂ラジブログ
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3月20日 魂ラジレポート
「東京タワー 〜ボクとラジオと時々オカン〜」 第二話前篇
1988年秋、アミューズ10ムービーズオーディション。
最終選考が終わりかけた会場に、ギターケースを提げた若者が、
息を切らせながら現れた。

「お、おいどんが福山マシャハル、19歳ばい!」

これは、18歳で故郷長崎を旅立った彼が、
東京で「ラジオ界の国宝」と呼ばれるまでに至った、
20数年に渡る、壮大な上京物語である。

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ブルートレインに揺られること数時間。
東京に到着したボクは、その足で友達の住む拝島駅に向かった。
彼は、同じ誕生日で同じ血液型、そして3年間同じクラスだった同級生。
どうやら、今は東京のどこかで風俗店の店長をやっているという噂だが、
ボクから数百万の借金をして、どこかへ消えたままになっている…。

ボクが彼の家に転がり込むことが決まったのは、今から一週間前のことだった。
上京前、ボクは長崎から電話をかけた。
「東京に行くけんさ、お前んちにしばらく住ませてほしいんだけど」
「おう!オレんち、ロフトあるから大丈夫だよ!」

ロフトは、当時のトレンディドラマでよく見た「憧れの家」のイメージ、
そのものだった。
「やっぱり東京はすげぇな」と思いながら、友達の家に着いてドアをあけると、
「ロフト」という名のスペースは、
高さ50cm、幅70cm、奥行き180cmの「布団置き場」だった。
「これがロフト?」
「そうだよ」
「…狭っ」
「お前、今日からここに寝ていいよ」

友人の心優しい(?)言葉により、ボクは一晩その部屋で夜を明かすことになった。
狭い部屋なので、身を落ち着けるのにも一苦労。
体をねじって部屋に入り込み、やっとのことで眠りにつく。
翌朝は目を覚まして普通に立ち上がろうとしたら、勢いよく頭をぶつけた。
「冗談じゃねぇよ、お前がここに寝ろよ!」
次の日から、ひとつだけのベッドを奪い合ってケンカが勃発したのは、言うまでもない。

よくよく話を聞くと、友人も最近仕事を辞めたばかりだった。
会社を辞めて上京してきたボクと、
東京で仕事を辞めて何か新しいことを始めたい、という友人。
「俺たちの未来に乾杯」
そんなバカなことを、当時は真剣に考えていたのだ。
これからどうなるかなんて先の見通しは全く見えなかったけど、
「東京」にいる。
それだけで、ボクには明日がキラキラと輝いて見えた。

仕事を辞めたボクたちは、次の日から昼と夜と、
それぞれにバイトを分担して働くことにした。
ボクは昼担当。ピザの宅配バイトを始めた。

店で注文を受けて、ピザを届ける。
ただそれだけの仕事だったけど、本当にいろんな人に会った。
なぜか片乳の出ているマダム。
狭い一室に何人も身を寄せ合って住んでいる、外国人の部屋。
何度チャイムを鳴らしても住人が出てこないから、
頭にきてドアをガンガン蹴飛ばしたこともあった。
気が済むまでドアを蹴飛ばした後に出てきたのは、
体中イラストだらけの、人生の先輩…だった。

うれしいこともあった。
そのピザ屋のオープニングスタッフだったボクは、
なんと、新装開店祝いで店を訪れたアントニオ猪木さんと、
山本小鉄さんにお会いすることができた。
ボクは、そのとき皆で撮った写真を、今でも大事に持っている。
もしもこのときのことがなければ、
猪木さんがライブに来てくれる、なんて、夢のまた夢だったかもしれない。

あるときには、長崎で辞めてきた会社の本社から、ピザの注文がきた。
新宿副都心の大きなビルに、「さすが東京だなぁ」と感動しながらピザを届け、
ビルを出て帰ろうとすると…

ない。
バイクがない。
ばかでかいビルを一周、二周と回ってみても、見つからない。
「東京にはバイク盗るヤツがいるんだ…」とボクは憤慨し、茫然自失となった。
しかし…。

ちょっと待てよ。
よく考えてみると、ボクはこの階にバイクを停めた覚えは、ない。
そう、バイクを停めていたグラウンドレベルと、1階を間違えていたのだった…。
「こんなとこまで来て、俺は都会にバカにされとっとか!
また都会が俺ば、バカにした…!」
その日ボクは、
誰にぶつけてよいかわからない怒りがこみ上げてくるのを、抑えきれなかった。

バイト先では、「長崎くん」と呼ばれていた。
「ハツラツと働くこと」がいいことだと信じてやまなかったボクは、
注文を受けるといつも、「はい、まいど〜!」と大きな声で返事していた。
「元気がよくていいね」と言われて調子にのったボクは、
翌日からさらに大きな声を出した。
それが「田舎モンだね」という東京流の嫌味だとは知らないまま。

そしてある日、ボクは店長に呼び出された。
こないだ褒められたばかりだし、何かごほうびでももらえるんだろうか。
胸を躍らせながら店長の前に立つと、店長はあっさり、ボクにこう告げた。
「キミ、バイト辞めてくれないかな。
キミの雰囲気って、この店の雰囲気にあわないんだよね」。

「…バカにしとっとか!きさん、こら!
俺は東京でピザを届けるために長崎から出てきたんじゃなか!」
ボクは思わず叫んだ。心の中で。
現実のボクはというと、
「はい、わかりました…」と、「クビ」という現実を認めるしかなかった。

そんなこんなで、ボクはたったの3ヶ月でバイトをクビになった。
とりあえず、次のバイトを探さなくちゃ。
ピザなんかじゃだめだ。肉体労働で、もっとがしがし働かなくちゃ。

そんな風にして、ボクは徐々に、かわいい女の子や、東京の華やかな世界とは、
全くかけ離れた世界に足を踏み入れ始めていた。
…なんてことは、当時のボクは知る由もなく、
ただ、猪木さんとの写真を見つめながら、
明日の生活費を稼ぐために、ひそかにこぶしを握りしめていた…。

ボクの音楽はまだ、始まっていない。


(つづく)
投稿時間:2007-03-20 21:40:42
 
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