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2月15日 小原信治の草の根広告社
現在、過去、未来という名のチョコレート
 
 2月14日、バレンタインが来るたびに、想い出す味がある。
当然チョコレートなんだけど、残念ながら、愛の告白とともに貰ったものじゃない。
 今から20年前。大学1年の夏休み。免許取り立て。車買い立てで、いきなり大阪、神戸、そしてカーフェリーで小豆島へと、無謀な自動車の旅に出た時のこと。一週間ほどの旅を終え、大阪から東京に向かう長い高速に入る前に偶然立ち寄った古い喫茶店。確か淀川のほとりだったと思う。店の名前すら記憶にないけど、オレンジ色の看板がやけに眩しかったのを憶えている。店に入ったのは午後八時過ぎ。客はぼくひとり。初心者マークの上に毎日が初めての道という緊張の連続で疲れていたぼくのカラダは、眠気覚ましのコーヒーとともに、甘いものを欲していた。何を注文しようかと店内を見渡すと、壁に貼られた手書きメニューの「不思議なチョコレート」という文字が目に飛び込んで来た。
「すいません、あの不思議なチョコレートってなんですか?」
 すると、カウンターの奥で膝の上の猫を撫でていた店のご婦人が顔を上げた。
「あんたいくつだい?」
「18ですけど」
「じゃあ絶対食べてみるといいよ」
 それは、食べる人の心の有り様によって、感じる味が違うという三種類のチョコレートだった。一粒大のそれぞれにつけられた名前は、「過去」「現在」「未来」。
「どれが一番おいしいかでも、その人の心の有り様が分かるんだよ」
 冗談だろう、と思いながら、ぼくはコーヒーとともに出された三つのチョコレートに手を伸ばした。まずは「過去」。
「どうだい?」
「…ちょっとほろ苦い、ビターチョコレートみたいな感じです」
 続いて「現在」
「これは?」
「…甘いです」
 そして、最後は「未来」。店のご婦人はフフンと笑うと、「未来」については味を訊くことなく、こう言った。
「どれが一番おいしかった?」
「…現在、かな」
 正直、ぼくは「未来」を一番おいしいと思えなかった自分が歯痒かった。悔しかった。
「どれが一番おいしいかでも、その人の心の有り様が分かるんだよ」
 そんなの冗談に決まってる、と思っていたが、結果は店のご婦人に言われた通り、チョコレートの味が今の自分の状態そのままになっていたからだ。今は楽しかったが、夢も見えず、明日も見えず、やりたいことも分からない。そんな焦りの真っ直中にいた18歳のぼくの心そのものだったからだ。そんなぼくの心を知ってか知らずか、ご婦人は言った。
「今は若いから『現在』が一番おいしいだろうさ。でもね、あんたもいつか、過去が一番
おいしいと思うようになるよ、あたしみたいさ」

 あれから20年。ずっと頭に残っていたそのチョコレートのことを、一昨年発売した小説「忘れられない恋のうた〜sweet&better〜」に書いたとき、こんなことを思った。
 あのチョコレート、今のぼくが食べたら、それぞれの味はどんなだろう?一番おいしいと感じるのはどれだろう?
 先週、大阪に行ったとき、高速の入り口近くの、淀川のほとりにあるその店を探してみたが、どうしても見つからなかった。
 あれから20年、今ぼくは『未来』が一番おいしいと思えるんだろうか?あのご婦人の言った通り、『過去』を一番おいしいと思うようになっているだろうか?
 2月14日、バレンタインにチョコレートを食べるたびに、ぼくはそんなことを思っている。

小原信治







投稿時間:2007-02-16 12:15:51
 
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