「僕は実名を勧めたいけど、実現するためには教育が必要かな」
よ:ちょっと話が変わりますが、僕、今後変わっていくだろうなと思うことにプライバシーの問題があると思うんです。プライバシーをオープンにすると手に入るものも増えると思うんです。
ふ:FacebookやTwitter的な考えですね。
よ:どっちも秤にかけるものでもないんですけど、実名のほうがメリットがいっぱいあると僕は思うんですが、深津さんはプライバシーの問題どう思われますか?
ふ:結構デリケートな問題で難しいんですけど、僕は実名賛成派です。ただ、実名でやるには前提としてインターネットがどうであるとか情報を扱うのがどうであるということをちゃんと教育した人じゃないと、使いこなすのは難しいのかなとは思います。結局、実名であるということはどうでもいいつぶやきとかが1万人とかに届くということなんですよね。でも一般ユーザーで単なるつぶやきが1万人に届くという意味を実感として持つのが難しい人も多いと思うんですよ。犯罪告白で人生一発でだめにしちゃってる人とかもいますしね。。結局のところすごく大きな力を個人に与えていることになるので、力の使い方は前提として教育しておかないと難しいかなと思います。僕は実名を勧めたいけど、実現するためには教育が必要かなというのがひとつ。
あと、モノによるんですけど、位置情報とかは僕は控えたほうがいいかと思いますね。
よ:具体的なレベルで考えられてるんですね。
ふ:自分の発言とか過去の発言が見られるのはその人の信用の担保になるから別にいいと思うんですが、位置座標とかは犯罪に使われやすいし、注意しても守れないものですからね。「名古屋なう」とつぶやいてその間に自宅に泥棒に入られたらどうするみたいなことは、リテラシーが高いことで防ぐことができるものではないので。現状は位置情報についてはセンシティブに扱ったほうがいいんじゃないかなと思いますね。
よ:Facebook=実名のインターネットになってきていますが、今後広がっていくと思いますか?
ふ:僕は今後広がって欲しいですね。みんな匿名だ、なんだって言うけれども、本当にネットが完全に普及したときに政治家だったり、企業のえらい人だったり、評論家だったりが過去に発言したことがすべて履歴として残っているっていうのはすごいことだと思うんですよね。皆そう簡単に悪いことや、適当なことができなくなる。公人がしっかりするって意味では強力ツールになるんじゃないかなと思いますね。
よ:そうか。自分の死ぬときにTwitterの発言を残しておくか消すか、選択ができる時代なんですよね。笑
ふ:そうですね。僕らが死んだ後、300年後ぐらいの子孫がひいひい爺ちゃんどんなこと発言してんのかなとか検索されて自分の発言を見に来るかと思うと、背筋をちゃんと伸ばして生きないといけないなと思いますよね笑
「いい仕事してて食えないってことはまず無いと思うんです
よ:アンドロイドアプリはまだ作られてないんですか?
ふ:まだ作ってないですね。端末が多すぎる。何百台、何千台あるものを個人でコントロールしきれないぞというのがありまして。アンドロイドだとデバイスの設計レベルで違うから動く保証ができないんですよ。メールでウズベキスタンからこの端末で動かないぞというメールが来ても僕はどうしようもないし。一個で動作保証できるiPhoneがあるならまだアンドロイドは手出さなくていいかな。という状況ですね。
よ:そこはやっぱり”まだ”なんですか?
ふ:そうですね。実質アンドロイドアプリだとまだ生活が成り立たないですしね。多分僕が勤め人だったらアンドロイドアプリも作ってるとは思うんですけど、自分のアプリで食うってことになってくると、そもそも食えない環境だとまだ手を出すほど体力がないってのが出てきますね。
よ:今はまだアップストアも伸びていて、アプリが売れる環境ですが、今後この環境が変わることもありえますよね?
ふ:全部アプリが無料になるというようなことも十分あり得ると思いますね。
よ:そこに対する不安だったり、気になる気持ちはありますか?
ふ:そこにあまり不安はないですね。多分そうなったら僕の今の生き方はできなくなるとは思うんですけども、
角度を変えて、例えばすごくいいフラグシップのアプリをiPhoneで作って実績出して、アンドロイド版を作ってユーザーではなく携帯電話会社に売って、プリインストールで入れてもらってそっちでお金をとるとか。
なんかいいもの作ればやり方はいろいろあると思うんです。
よ:いいもの作ればやりようはあるって、今までの実感がそう思わせていますか?
ふ:多分。けど、アプリに限らず、特定の分野でいい仕事してて食えないってことはまず無いと思うんですよね。市場がない場所で仕事しない限りは。アナウンサーだって、面白いことやいいことがしゃべれれば確実に食べていけますよね。企画の人だっていい企画が書ければ絶対食べていけますし。だからちゃんと作れば、まあ生きてるんじゃないかなと思っています。
よ:最後に未来のクリエイターにアドバイスをお願いします。
ふ:「とりあえず作る」これですね。とりあえず1個、しょぼくてもいいからリリースまで持っていく。質が低いから、恥ずかしいからとリリースまで持っていかない人が多い気がしますが、もったいないと思います。是非あなたのアプリを世に出して、反応を見てみてください。きっと楽しいですよ!
深津貴之
株式会社 Art & Mobile 代表。
自作のiPhoneアプリを販売して生計を立てるアプリ作家。
代表作は、TiltShiftGenやQuadCamera、ToyCamera等。