「普段なら短所になるところを長所に。」
よ:iPhoneって何でもできちゃう機械という感じがあるんですが、逆に深津さんの方でこれはiPhoneに”無い”なって思ったものはありますか?”無い”ところを補うためにアプリ制作が始まるような気がするんですが。
ふ:レンズがしょぼかったことですね。iPhoneのカメラについてるレンズはあまりに性能が悪すぎた笑。これは最初のアプリを作ったきっかけかなとは思っています。
もともと、iPhoneが出るちょっと前からカメラの性能が悪い、画像のサイズが小さいっていう話はずっと出ていて。日本では売れないという話になっていたんですね。でも僕はそれを聞いたときに、逆にカメラの性能が悪いこととか、レンズがしょうもないことを価値に変えられないか。普段なら短所になるようなところを、うまくデザインとプログラムの力でひっくり返して長所にできないかということを考え出しました。
よ:昔からLOMOなんかのカメラは、そういった短所を味としてとらえてますもんね。
ふ:そうですね。なのでそういったものを作ってみようと、デジタルで撮ってる最新の機器なのに、エフェクトが適当にかかって、ランダムだけども味のある画が撮れるアプリみたいのをつくろう思い立って、iPhoneでカメラのアプリケーションを作り始めたんです。
よ:作り始めたとき、まわりの反応ってどうでしたか?
ふ:うまくいくか、いかないか。反応は五分五分って感じでしたね。というより、iPhone自体のインパクトが強すぎてアプリを作っててもまだそんなに周りが興味を持ってくれなかった感じでした笑。
よ:自分の作ったアプリが世の中でこんなに知られるようになると思っていましたか?
ふ:いや、最初は本当に興味本位の実験だったので、知られるように工夫しようとも思わないでぽーんと投げた感じでした。そしたら、結構有難いことに反響がありまして。
よ:それでどう思われたんですか?いきなりこれで食おう!と思ったんですか?
ふ:いや、最初はこれで食おうっていうよりは、ただただユーザーの反応が面白かった。ってとこでしょうか。
例えば、いい悪いではなく単にタイプの違いだとは思うんですけど、広告系のコンテンツで企業のスペシャルサイトとかを作っても、話題が広まったりはするんですがユーザーからのフィードバックが帰って来ないんですよ。作った人には。あくまで企業のサイトであって、企業が面白いことをやっているということになる。
でも、自分でアプリを作って、自分で世界に出すと世界中の人から「こうしたほうがいい」とか「面白い」とかフィードバックがいっぱい来るんです。あとは、企業のサイトだと3ヶ月くらいでキャンペーンが終了してページを閉じてしまうことがあるんですけれども、自分で作ったアプリだったら自分がメンテナンスしている限りはずっと生きていくんですよ。結局ITとかコンピューターとかってデータが一生残るとか言いますけど、実際にはWEBとかインターネットって3ヶ月くらいで見えなくなったりなくなっちゃったりするものも多いので、いい悪いではなくて、普段やっている仕事とアプリは全く真逆な性質を持っていたんですね。なのでそこがすごく面白いなと思いました。仕事ではスペシャルサイトを作りつつ、個人ではアプリを作ってとしばらく並行して
やってましたね。
よ:今お話を聞いていると、企業サイトなんかは閉じた環境で、アプリは開かれた環境で作られているっていう感じを受けましたが。
ふ:そうですね。それはあると思いますね。アプリの場合は開発中秘密にしなきゃいけないということも別に無いので。次こういう機能付けたいんだけどどう思う?っていう質問もパブリックにどんどん投げちゃってもいいですしね。
「かたくなに画像読み込み機能をつけないようにしています。笑」
よ:今さらですが、僕トイカメラアプリダウンロードさせて頂いて使っているんですけど、このアプリ、使ったときに驚きがあるんですよね。これは無いなっていう写真もあれば、最高!自分の発想の外に出たなっていう写真もあって。カメラのおみくじみたいだなと思ってたんです。
ふ:そういう楽しみ方してもらえれば最高です。
よ:リリースされてから2年半ということで完成度はもうかなり高まってますよね。
ふ:そうですね。でもかたくなに画像読み込み機能をつけないようにしてますけどね笑
よ:やろうと思ったらすぐ付けられるんですか?
ふ:すぐできます。でもあのアプリは一番最初に作ったときから、画像の読み込み機能はつけないというコンセプトを作っていたんです。多分画像読み込み機能を付けたらもっと売り上げは上がるんですけどね笑。でもあれは写真を編集するアプリじゃなくて、写真を撮るためのアプリなので。編集に関わる機能はすべて外して”撮る”ことにユーザーが集中できるようにしようと決めてたんです。
でも、めちゃくちゃ画像読み込み機能へのリクエストがくるので、最終的には写真編集に特化したアプリケーションを別に作ってリリースしました。
よ:撮ることに集中する、、ってどういうことですか?もうちょっと詳しく教えてください。
ふ:なんでしょう。このトイカメラアプリを出した頃は最初からカメラ画面が立ち上がるアプリとかも全く無かったんですよ。あの時代は、まずアプリを起動して、カメラボタン押して、そのあとカメラが立ち上がって、みたいなアプリしか無かった。
よ:なるほど!
ふ:そういうことを全否定して、起動したら即カメラ。で、撮ったら即結果が見えて、セーブボタンもなければ編集ボタンも無いようにしようと。写真を気軽に撮るためのアプリだから写真を撮るほうに集中してもらいたくて。被写体見たり、モノ見たりするよりも、画面とにらめっこしてるようなことにはならないように機能を調整しましたね。
よ:それは深津さんの場に対する考え方みたいのが出ていますよね。
ふ:そうですね。目的があってその目的のためのアプリにしたかった。っていうのがありますね。
よ:体験を先にデザインしようとして、そこに必要なものを発想して作ってらっしゃるんですね。
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